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名古屋高等裁判所 昭和55年(ラ)101号 決定 1980年6月12日

抗告人

東海観光開発株式会社

右代表者

西村竹一

右代理人

江口三五

外二名

相手方

新美裕達

主文

原判決を取消す。

本件を名古屋地方裁判所一宮支部に差戻す。

理由

本件抗告の趣旨並びに理由は別紙抗告状(写)記載のとおりである。

よつて案ずるに、抗告人提出の疎甲第三、第六、第七号証並びに原審における西村裕昭の審尋の結果によれば、抗告人は、現在相手方の住所地となつている犬山市大字橋爪字一町田一二番二五宅地159.34平方メートルを昭和四四年七月二九日相手方に分譲するにあたり、相手方が同地上に居宅を建築する場合には、北面隣地の日照等の関係から二階建等の高層建築をしてはならない旨の特約を付したこと、右分譲地は二〇〇区画に及ぶ住宅団地であるが、その全部につき既に分譲が終つていること、東西に二列ずつに並びその外側が道路に面するように整然と区画された分譲地のうち、南側の道路に面する側の分譲地の買受人にはそれぞれ相手方と同様の特約付で分譲されていること、しかるに、相手方は、右土地上の平家建居宅を右特約に反して二階建建物にすべく増改築工事に着手しようとしていること、が一応認められる。

右認定事実に徴すると、本件のような規模、目的の宅地の分譲において右特約に合理性がないとはいえず、従つて相手方は抗告人に対し右宅地上に二階建建物を建築してはならない旨の不作為義務を負つているものというべく、相手方がこれに違反するときは、抗告人は右特約の効力として相手方の行為の差止請求をなしうるものと解するのが相当であり、右特約の効力を失わせる事情の発生したことの疎明が相手方からなされない限り、被保全権利の疎明に欠けるところはないというべきである。

そうすると、右と異なる見解の下に抗告人の本件仮処分申請については被保全権利の疎明がないとした原決定は不当であるからこれを取消し、なお、本件については原審において更に審理をなさしめるのが相当であるから、本件を原裁判所に差戻すこととし、主文のとおり決定する。

(村上悦雄 吉田宏 春日民雄)

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